一人芝居台本【レイノウシャ】 ①虚数

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photo by Katsuhiko makino
at Bitches Brew



初めて小説でも書いてみようかな~と、突然思った。でもあれだな、一人芝居の台本にしてもいいな。

【レイノウシャ】

①虚数

わたしが本当に言いたいことをあなたが理解出来るはずがないと、わたしは知っているので、あなたと話したくないのです。あなたは、どうして私に理解できないなどと思うのか!と思われると思いますが、まさにそこです。そこそこ。そこね。はい、そこ。

「マリリンとアインシュタイン」という映画をご存知でしょうか?わたしもずいぶん前に観ましたもので、もうぜんぶは覚えて居りませぬが、ひとつ印象に残っている場面がございます。

マリリンというのは、マリリン・モンローのことです。映画に出ているのは、マリリンのあのいちばん有名な白いワンピースの扮装をして、白いハイヒールをはいて……あの、地下鉄からの風でワンピースが捲れて、そのスカートを必死で抑えているあの写真で有名な扮装。映画のスチールなのかな……その扮装で、金髪をカールさせて、顔につけ黒子をした、マリリンにそっくりさんの女優であって、マリリンとアインシュタインが本当に対話したかどうか、わたしは存じませぬ。

おそらく、対話したら面白かったろーなー、それはこんなではなかったかなー、という素敵にして、詩的な創作力の産物ではないかと、思うのであります。まあ、それは置いといて。

印象に残っている場面というのは、マリリンとアインシュタインが、玩具の車にライトをつけて走らせたりしながら、おしゃべりをしています。マリリンはアインシュタインに訊きます。「相対性理論を、わたしにわかるように、説明出来る?」と。

アインシュタインは「ノー」と答えます。マリリンが「どぉして?」と可愛く聞き返しますと、アインシュタインは答えます。

「あなたは、小麦粉という言葉を知らない人に、パンの作り方を説明出来るかね?」

穿った、氣の効いた台詞です。何十年たって他を忘れても、そこだけ覚えているくらいのですね。まあ、それは置いといて。

わたしがこれを観ましたのは、中学か高校か、遅くても20歳をちょっと越えた、つまり、開きがあって申し訳ないが、およそ30年前後前だと思います。いや、開きがってね、あなた、歴史年表から見たら、大した開きじゃありませんよ。こんな一人の無名人の10代か20代かなんて。これが犯罪の裁判ならですね、二十歳の前か後か問題かもしれないけど、そうじゃないですから。映画一本いつ観たかですから。あ、いえ、それも置いといて。

本題。つまりこういうことなんですよ。わたしがあなたに、わたしの本当に言いたいことは、話してもあなたには理解出来ないであろうから、話したくない、というのは。

あなたは大金持ちのお嬢さまでいらっしゃって、とても教養が豊かでいらっしゃる。貧民の出の高卒のわたし、しかも神経を病み、今でいうところのニート寸前の登校拒否女子高生で、大学受験どころか、高校も出席日数ぎりぎりでやっと卒業したようなわたくしとは、格も教養のレベルも違うでありましょう。えーと、確か大學をご卒業の後は、海外にご留学なされて、英語もたいそう達者だとおっしゃっていました記憶がございます。わたくしなどは、翻訳アプリがないと、Facebookに出てくる英語など一行も理解できませんし、外國人の方が入れてくださった英語のコメントにも答えることが出来ません。あ、そういえば、その翻訳アプリの存在を教えてくださったのも、あなたでいらっしゃいました。真にありがとうございました。まあわたくしなどは、仮に神経も病まず楽に高校を卒業していたとしてもですね、ちょっっっと吾が実家では、子どもを私立大学にはやれませんから、高卒は同じだったかもしれないが、まあ、そういうわたくしとですね、大金持ちの出のあなたとではですね、教養がまるで違う。貧民で無教養なあんたごときに理解出来ることを、なぜこの私が理解できないなどということがあるか!と、あなたは思われると思うのです。

まあ、その辺りで、すでに半分言葉通じてませんわな。まあ、それは置いといて。

あなたはわたくしと先にしたメッセージのやり取りで、「虚数」という言葉を理解されませんでした。いやもちろん……教養豊かなあなたでおられますゆえ、辞書に書いてあるようには理解されていらっしゃいました。

どういうやり取りだったかな~

ああ、そうだ、まあそもそもの発端は、冗談だったんですよ。あの、Facebookで、ですね、わたしと友人数人はですね、あるときからコメント欄で誰かが面白いコメントをすると「面白い!座布団〇枚!」と遊んでおりましたんですが、そのうち友人の一人が、あまりにも誰かのコメントが面白く氣が効いておりましたので、「座布団虚数枚!」と入れたんですね。それでみんなで更に大ウケの大乗りだったわけで、その後もずっと、それがわかる仲間内では「座布団虚数枚!」「こっちは宇宙布団を虚数枚じゃ!」とかやっておりましたです、はい。

まあ、わたくしもですね、こんなギャグは誰にでも理解されてウケると思っておりましたんですが、そうこうするうちに、なんかの弾みで、わたしたちのメッセージのやり取りでも出てきたんですね。乗りで。この「座布団〇枚」が。で、最初は「座布団〇枚!」とやっておりましたんですが、ある弾みでわたしが「うーーん、これは面白すぎる!これは……座布団………」とメッセージしたときに、あなたが「うん」「うん」「何枚?」と訊いてきました。わたしはなるべく爆笑させようと、暫くもったいつけてからおもむろに「虚数枚!」とメッセージしました。

爆笑が返ってくるかと思いきや、返ってきたのは、何だかガッカリしたようなスタンプ。あれ?と思いました。そうしましたらあなたは「面白くなかったの?」と悲しそうなメッセージをよこしました。わたしは何が何だかわからず「え、面白かったよ、だから虚数枚だって!」と返しましたが、あなたの返信は更にガッカリしたようなもので「実際にはない数でしょう?虚数って」。

いえ、慌てましたですよ、わたし。喜ばせようと思ったら、ガッカリさせてしまって。その頃はまだあなたを好きなんだと、大切な友だちなんだと、自分に必要な人なんだと、思っておりましたからねぇ。

今はその勘違いも解けましたわな。わたくしはあなたを好きでもなければ、必要ともしていない。まあ……つまりは、こういうことなんです。たぶん、あなたに言っても理解お出来にないだろうなと、わたくしが僭越にも思う理由がですね。

別にあなたが言葉を知らないとかいうことではなくてですね、違う言葉の感覚の中で生きているわけですよ。あなたとわたしは。違う言葉の感覚の中で生きているということはですね、とりもなおさず、違う世界を生きている、ということなんですね。同じ地球にいても。

まあ、そういうことなんです。おわかりいただけたでしょうか?だから、わたくしは話したくないんでございますよ。話してもわからないと思うんで。あなたをね、突然ブロックした理由をです。

続く



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